水温む春、と言いたいところだが、三寒四温の言葉どおり、冬に逆戻りしたかのような肌寒い3月上旬のとある日に、筆者はキャピトルホテル東急内にある日本料理屋「水簾」を訪ねてみた。このホテルは首相官邸にほど近いため、野田首相らが頻繁にこの日本料理屋を使用して会合を重ねている。報道に寄れば、昨日も野田首相御一行様がこの料理屋を訪ねたようである。官邸関係者が足繁くこのお店を利用する訳は、このお店が美味しいからではなく、このお店が官邸に近く、しかもホテル内ゆえ警備がし易いためであろう。このお店は、ホテル改装前は確か、「源氏」と言う店名だったように記憶している。筆者は、午前11時半丁度にお店にお邪魔した。予約の無い旨を告げると「1時までに食べ終えるなら」と言う条件付きで窓際のテーブル席へと案内された。外は格子構造になっていて、上から下へと水が滴り落ちるしかけがしつらえてあり、まるで雨が降っているかのような錯覚に陥る。いくら店名が「水簾」でも、落ち着かない事おびただしく、世間は節電モードだと言うのに、このエネルギーの無駄遣いはちとやり過ぎではないかと思えた。
筆者は、水簾弁当からお造りを除いた程度の品揃えである、点心(4,042円)(画像)と言う軽めのメニューを選んだ。先付は、白豆腐と黒豆腐の合わせ胡麻豆腐に雲丹を乗せた一品である。甘味を押さえたしっとりとした味で、さすがは野田総理がこのお店の料理を肴に日本酒を一升飲んだほどのできばえであった。煮物は、季節野菜「菜の花、カボチャ、大根、芽キャベツ」の煮物であるが、ダシの利かせ方が秀逸である。次いで箱盛が出てきた。二段重ねで、鮪の赤身は色艶から見て安っぽい感じでお味もそれなりであったが、マナガツオの照焼はタレの旨みがよく滲みていて美味しく、蛍烏賊の味噌和え、もずく、ずわい蟹の天麩羅、八寸(煮だこ、海老、穴子豆腐、玉子焼き、蚕豆、公魚煮こごり)などは、さすがの出来具合で申し分が無かった。これに桜海老の炊き込みご飯と赤だしが付いており、最後まで手抜きは無かった。デザートは玉露のアイスクリームと、高級路線の締めくくりにも憎い演出があり、さすがの官邸御用達の日本料理屋「「水簾」だった。