札幌ご出身のおねーさんが「この後、リゾットの一口サイズのものになりますが、炭水化物は取らない主義とのお話ですので、ブルーチーズの盛り合わせなどはいかがでしょう?」と提案してきたので、筆者は二つ返事でOKした。フランス人は食後にフロマージュ(チーズ)を楽しむ習慣がある。750mlのフルボトルワインはまだ半分ほどが残っていたので、チーズをつまみながら、この残りのワインを味わってみた。チーズはゴーダチーズ、パルメザン、ゴルゴンゾーラの三種(乾燥いちじく添え)だが、勿論全て佐渡産!このワイン、ワインセラーから出した直後は冷え切っているため、やや重みのある風味だったが、しばらく室温にならし、空気に触れさせておいたら、まろやかなコクと風味に変わっていた。デザートは、フォンダンショコラ(ショコラの中にはイチゴ・野イチゴ・ブルーベリーのソースが入っている)、いちじく、あんぽ柿、佐渡牛乳のシャーベットである。「最後は、コーヒー、エスプレッソ、紅茶になりますが、いかがいたしましょう?」と尋ねてきたおねーさんに紅茶をお願いし、それを運んできた時に、筆者は「おねーさん、髪を切りましたね」と思い切って尋ねてみた。すると、おねーさんはびっくりしたような顔で「よく分かりましたねえ〜、はい、バッサリと切りました」と答えた。そうなのだ、夏の訪問時は確かロングだったはずなのに、今回は受ける印象が違っていたからだ。筆者は「ショートの方が可愛いですよ」とお世辞を言っておいたが、本心からそう思った。「女性が髪を切るときは、失恋した時」と思い込む男性は多いようだが、現実は、「髪を切りたいから切っただけ」が最も多い、髪を切る理由である。ロングは手入れが大変だし(結婚して忙しくなった途端髪を切る女性の大半の動機はこれ)、流行に合わせて髪をカットしてイメチェンを図りたくなる時だってある。彼女にも何らかの心境の変化があったのだろう。普段一緒にいる時間が長い男性(彼氏にせよ、ご主人にせよ)は一向に気付いてくれないのに、半年ぶりに会った知人からそれを指摘され褒められるとうれしいもの。女心ってそういうものなんです。
そして筆者は、「ワインを長時間室温に晒すと風味が微妙に変化するので、ワインクーラーを使用すべきでは」と彼女に指摘したが、後でソムリエ氏に伺ったところ、「筆者注文のワインは、古くて重みのあるワインなので、むしろ常温のままで放置し、少し温度を上げてやると、風味が増すのでワインクーラーは使用しない」との返答であった。ワインクーラーを使用するのは、重みのある白ワインやボジョレーヌーボーなどの若いワインの時で、そうする事により、すっきり、きりりとした味わいが保てるのだと言う。筆者のワインクーラーに関する無知ぶりが露呈されてしまい誠にお恥ずかしい限りであった。
そうこうするうちに、シェフの里野さんがテーブルに挨拶にやってきた。筆者は椅子から立ち上がり、里野さんに握手を求め、佐渡牛のポアレの美味しさに対するお礼を述べた。筆者は、里野さんから着席するように促され、しばし歓談となった。里野さんは、フランスのリヨンで修業されたそうで、どうりで、食の都「リヨン」のお料理の特徴である、素材の良さを引き出す技法が随所に垣間見えたのに納得した。リヨンと言えば、ポールボキューズ、トロワグロなどの有名シェフの修業地である。その系譜を汲むシェフが在籍する美味しいフレンチレストランが佐渡に存在する事を知る佐渡島民はそう多くはあるまい。ランチで2000円、デイナーで4000円からの価格帯は一般の佐渡島民の感覚からすれば決して安くはない。だが、クリスマス、年末年始の会食、誕生日、何かの記念日、プロポーズなどの特別な日の晴れの舞台を演出する場として、このレストランは最適である。是非そのような際に利用して頂ければと思う。
レストラン ラ・プラージュ(クリスマスシーズン及び年末年始は予約が必須と思われます)
〒 952-1325 新潟県佐渡市窪田978-3
Tel 0259-57-3751 Fax 0259-57-3762
URL http://www.urasima.com/laplge.html
E-mail info@r-urasima.com